「オルカンもS&P500も良さそうだから両方買いたい」——新NISAを始めた多くの人が考えることです。しかし、両方買っても期待ほどの分散効果はありません。その理由を構成比率から解説します。
S&P500はオルカンに62%含まれている
オルカン(全世界株式)の中身を見ると、約62%が米国株(≒S&P500の構成銘柄)です。つまり、オルカンを買えばすでにS&P500の62%相当を保有していることになります。
両方買うと実際の構成はどうなるか
| 購入比率(オルカン:S&P500) | 実質的な米国比率 | その他比率 |
|---|---|---|
| 100:0(オルカンのみ) | 62% | 38% |
| 70:30(オルカン多め) | 74% | 26% |
| 50:50(半々) | 81% | 19% |
| 30:70(S&P500多め) | 89% | 11% |
| 0:100(S&P500のみ) | 100% | 0% |
50:50で買うと米国比率は81%になります。「分散投資のためにオルカンを入れた」はずが、実態はほぼ米国集中ポートフォリオになっています。
「両方買う」のメリット・デメリット
メリット
- 米国への信頼が強い場合:オルカンの「非米国38%」が気になるなら、S&P500を追加することで米国集中を意図的に作れる
- 心理的満足感:「どちらも持っている」という安心感(合理的ではないが、継続投資の動機になるなら価値はある)
- 証券会社の特典:複数ファンドを持つことで一部の証券会社のポイント還元条件を満たせる場合がある
デメリット
- 分散効果はほぼなし:相関係数が非常に高く(0.95以上)、両方下落するリスクは変わらない
- 管理が複雑になる:リバランス・確定申告・損益管理が複雑になる
- コスト:オルカン単体の方がS&P500より信託報酬が安い(0.05775% vs 0.09372%)ため、両方持つと平均コストが上がる場合もある
より良い分散方法
本当に分散を目指すなら、以下のアプローチが有効です。
- オルカン1本:最もシンプル。米国62%+その他38%の分散が自動でできる
- S&P500+新興国インデックス:米国集中を自分でコントロールしながら、意図的に新興国を追加する
- オルカン+債券ファンド:株式リスクを下げたい場合は、別の資産クラスを追加する方が真の分散になる
両方買った場合のリターン試算(20年・月5万円積立)
「オルカン1本」「S&P500 1本」「50:50で両方」の3パターンで、20年間月5万円を積み立てた場合の試算です(年利はオルカン7%、S&P500 8%を想定)。
| パターン | 想定年利 | 20年後の資産額 | 元本(1200万円)との差 |
|---|---|---|---|
| オルカン1本 | 7.0% | 約2,469万円 | +1,269万円 |
| 50:50(両方) | 7.5% | 約2,601万円 | +1,401万円 |
| S&P500 1本 | 8.0% | 約2,745万円 | +1,545万円 |
※簡易試算。実際のリターンは変動します。
20年でオルカン1本とS&P500 1本の差は約276万円。両方持っても中間値になるだけで、「どちらかより大幅に良くなる」ことはありません。大事なのは銘柄選びより積立継続です。
相関係数0.95:リスク分散にならない理由
投資の分散効果は「相関係数」が低いほど高まります。相関係数1.0であれば完全に同じ動きをするため、分散効果はゼロです。
| 組み合わせ | 相関係数(目安) | 分散効果 |
|---|---|---|
| オルカン × S&P500 | 約 0.95〜0.97 | ほぼなし |
| 株式 × 債券(国内) | 約 0.3〜0.5 | 中程度 |
| 株式 × ゴールド | 約 0.0〜0.2 | 高い |
| 株式 × 現金 | 約 0.0 | 最大(ただしリターン低下) |
オルカンとS&P500の相関係数は0.95前後と非常に高く、暴落時には同時に下落します。本当に分散を目指すなら、相関係数の低い資産クラス(債券・ゴールド・不動産)を組み合わせる方がはるかに効果的です。
「両方買っていい」ケース
合理的ではないが、以下のケースなら両方買うことに一定の意義があります。
- iDeCoでS&P500、NISAでオルカンと口座を分けて管理したい場合:資産管理の分かりやすさという実用的なメリット
- 積立設定上、ファンドを2本に分けないと上限枠を使い切れない場合:証券会社の制約による場合は容認できる
- 長期的に米国比率を少し上げたい明確な意図がある場合:「米国に追加でベットしたい」という意思決定として成立
結論
「両方買う」のは基本的に不要です。ただし「米国を意図的に多めにしたい」という明確な理由があれば、それはひとつの戦略として成立します。重要なのは「なぜその比率にするか」を自分で説明できることです。
どちらか1本に絞ることで、積立の継続・リバランス・確定申告のすべてがシンプルになります。シンプルさが長期投資を続ける最大の武器です。
| 質問 | 答え |
|---|---|
| 両方買っても問題ない? | 問題はないが分散効果は薄い |
| リターンは良くなる? | 中間値になるだけ。大きな差は出ない |
| リスクは下がる? | 相関係数0.95で分散効果はほぼゼロ |
| シンプルにするなら? | オルカン1本が最もシンプルで続けやすい |
