「4%ルール」の根拠として必ず出てくるトリニティスタディ(Trinity Study)。でも「聞いたことはあるけど詳しくは知らない」という方も多いはずです。この記事では、研究の内容・成功率の早見表・日本人が使う際の注意点までを徹底解説します。
トリニティスタディとは
トリニティスタディとは、1998年にアメリカのトリニティ大学の3人の教授(Cooley・Hubbard・Walz)が発表した論文「Retirement Savings: Choosing a Withdrawal Rate That Is Sustainable(退職貯蓄:持続可能な引出し率の選択)」のことです。
この研究の目的は、「退職後に一定の割合で資産を取り崩しながら、30年間資産が底をつかない確率(成功率)はどのくらいか?」を過去データで検証することでした。この研究から生まれた「安全引出し率4%」が、現在のFIRE運動における4%ルールの根拠となっています。
研究の方法と条件
研究では以下の条件でシミュレーションが行われました。
・取り崩し期間:15年・20年・25年・30年
・引出し率:3%・4%・5%・6%・7%・8%・9%・10%・11%・12%
・ポートフォリオ:株式100%〜債券100%まで6パターン
・インフレ調整:あり(実質引出し)・なし(名目引出し)
・成功の定義:取り崩し期間終了時に資産残高が1ドル以上
「ローリング期間法」という手法を使い、1926〜1955年の30年間・1927〜1956年の30年間…というように、開始年をずらしながら複数のシナリオで成功率を算出しています。
成功率の結果:株式比率と期間別早見表
以下はインフレ調整あり(実質引出し)での主な成功率です。
| 引出し率 | 株式75%・債券25% (15年) |
株式75%・債券25% (20年) |
株式75%・債券25% (30年) |
株式50%・債券50% (30年) |
|---|---|---|---|---|
| 3% | 100% | 100% | 100% | 100% |
| 4% | 100% | 100% | 98% | 85% |
| 5% | 100% | 83% | 82% | 66% |
| 6% | 89% | 72% | 68% | 50% |
| 7% | 79% | 62% | 56% | 37% |
※ インフレ調整あり(実質引出し)。原論文の数値を元に概算値を掲載。
この表から「株式75%・債券25%のポートフォリオで4%の引出しなら、30年間成功率98%」というのが4%ルールの根拠です。
4%ルールはどう導かれたか
4%ルールが「安全」とされる理由は、研究結果のうち最も厳しい相場(Great Depression・1970年代の高インフレなど)を経験した30年間でも資産が底をつかなかったという点にあります。
引出し率4%=必要資産は年間生活費の25倍(1÷0.04)という公式が生まれたのはここからです。
= 年間生活費 × 25
例)月25万円(年300万円)の生活費の場合:
300万円 × 25 = 7,500万円が必要資産
日本人が使う際の注意点
トリニティスタディはアメリカの株式・債券データに基づいており、日本人がそのまま適用するにはいくつかの注意点があります。
注意点①:研究は「30年間」が前提
トリニティスタディは30年間の取り崩しを想定しています。40歳でFIREすると残り50年以上あるため、30年を超える期間では成功率が下がる可能性があります。早期リタイアほど保守的な(3〜3.5%の)引出し率が推奨されます。
注意点②:米国株式市場が前提
研究はS&P500に近い米国株式インデックスのデータを使用しています。日本株のみで運用した場合は「失われた30年」のような長期停滞リスクがあります。オルカン・S&P500など米国・全世界株式への分散が前提です。
注意点③:インフレ率が日米で異なる
米国のインフレ率は日本より高く、研究のインフレ前提が日本に合わない可能性があります。日本のインフレが今後上昇するなら、3.5%引出しなど保守的な設定が安全です。
注意点④:税金を考慮していない
研究は税引き前の試算です。日本では投資利益に約20%の税金がかかるため、実質的な引出し可能額は約20%少なくなります。NISAの非課税枠を最大限活用することで税負担を軽減できます。
現代FIREへの適用方法
トリニティスタディの知見を現代のFIREに活かすポイントは3つです。
- 引出し率は4%を上限として柔軟に設定する:相場が好調な年は4%、暴落時は3%に下げるなど「変動引出し」にすると資産の長持ち効果が高まります
- 株式比率は最低50〜75%を維持する:研究では株式比率が高いほど成功率が上がっています。債券だけでは成功率が大幅に下がります
- NISAを活用して税負担を軽減する:新NISA(年360万円枠)を使い倒せば、取り崩し時の20%課税を避けられ実質的な成功率が上がります
まとめ
- ✅ トリニティスタディは1998年に発表された退職資産の引出し率に関する研究
- ✅ 株式75%・30年間・4%引出しで成功率98%が4%ルールの根拠
- ✅ 日本人の注意点は「30年超」「日本株リスク」「税金」「インフレ差」の4つ
- ✅ 早期FIRE(40代以前)なら3〜3.5%引出しがより安全
- ✅ 年金・NISA・変動引出しを組み合わせることで成功率を高められる
