ウクライナ戦争・中東情勢・台湾海峡の緊張……地政学リスクが高まる中、世界各国が防衛費を増額している。日本もNATO基準のGDP比2%目標を掲げ、2027年度には年間約11兆円の防衛費が見込まれる。この構造的な需要拡大が防衛関連株への関心を高めている。
この記事では日本株・米国株・ETFを具体的な銘柄名とともに解説し、投資判断に役立つ情報を提供する。
なぜ今、防衛株が注目されるのか
- 日本の防衛費倍増:2022年の安保三文書改定でGDP比1%→2%へ。2027年度に約11兆円規模へ増加予定
- NATO加盟国の軍拡:ロシアのウクライナ侵攻を受け、欧州各国が軍事費を急増
- 米国の対中抑止:インド太平洋地域への重点投資でサプライチェーン見直し加速
- 防衛産業の高い参入障壁:政府との長期契約・機密技術・認定が必要。新規参入が難しく既存企業に優位
防衛予算は景気後退時でも削られにくい。むしろ地政学リスクが高まるほど需要が増す「逆相関」の特性がある。ただし、政策変更・和平進展・予算削減で急落するリスクも持つ。
日本株:三菱重工・川崎重工・IHIほか
米国株:LMT・RTX・NOC・GD
米国は世界最大の防衛産業を有し、上場している防衛企業も多い。日本の証券口座から購入できる主要銘柄を紹介する。
ETF:ITA・XARの比較
| ETF | 運用会社 | 経費率 | 組入銘柄数 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| ITA | iShares(BlackRock) | 0.40% | 約35銘柄 | 米国航空宇宙・防衛に特化。LMT・RTX・NOC・GD等を均等ウェイトに近い形で保有。ロッキードの比率が高め |
| XAR | State Street(SPDR) | 0.35% | 約30銘柄 | ITAより均等ウェイトに近く、中小防衛企業も組み入れ。経費率はITAより低い |
| DFEN | Direxion | 1.02% | 約20銘柄(3倍レバ) | 防衛株の3倍レバレッジETF。ハイリスク・ハイリターン。長期保有には不向き |
2026年時点で日本株のみの防衛特化ETFは国内市場にほとんどない。日本の防衛株に投資する場合は個別株か、三菱重工・川崎重工を含む「防衛関連」アクティブファンドを探す必要がある。
銘柄比較表
| 銘柄 | 区分 | 配当 | 防衛比率 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| 三菱重工(7011) | 日本株 | あり(約1%) | 約30% | 防衛費倍増の最大受益株、多角化 |
| 川崎重工(7012) | 日本株 | あり(約1%) | 約20% | 潜水艦・哨戒機で独自の地位 |
| IHI(7013) | 日本株 | あり(約1%) | 約15% | 航空エンジン・ロケットでハイテク |
| Lockheed Martin(LMT) | 米国株 | 約3% | 約97% | 純粋防衛株、安定配当、F-35独占 |
| RTX | 米国株 | 約2% | 約60% | 防衛+民間航空の安定収益 |
| ITA ETF | ETF | 少ない | 100% | 米国防衛分散、経費率0.40% |
リスクと注意点
地政学リスクの急変
停戦・和平交渉が進むと防衛株は急落することがある。ロシア・ウクライナの停戦交渉が報じられた際、欧州防衛株が数日で20%近く下落した例がある。
倫理・ESGの観点
武器製造企業への投資は、投資家の価値観・倫理観によって判断が分かれる。ESG投資を重視するファンドは防衛企業を除外していることが多い。投資判断は自身の価値観に沿って行うことが重要だ。
政府予算・政策リスク
防衛費は議会の予算審議や政権交代により変動する。米国では毎年の予算協議で継続的資金調達(CR)問題が生じることもある。日本でも防衛費2%目標の財源問題が残っている。
防衛株はコア(オルカン等)の10%以内でサテライト投資として組み込むのが安全。地政学リスクへのヘッジとして少額持つことで、リスク分散効果が期待できる。個別株より分散されたITA/XARからスタートするのが初心者向け。
日本の防衛費増額タイムライン:いつ・いくら増えるのか
防衛株の投資判断に必要な「予算の具体的な数字と時期」を整理します。
| 年度 | 防衛費(兆円) | 対GDP比 | 主な用途・注目点 |
|---|---|---|---|
| 2022年度 | 約5.4兆円 | 約0.96% | 安保三文書改定、増額方針決定 |
| 2023年度 | 約6.8兆円 | 約1.2% | ミサイル(トマホーク)取得開始 |
| 2024年度 | 約7.9兆円 | 約1.4% | 護衛艦・戦闘機(F-35)取得加速 |
| 2025年度 | 約8.7兆円 | 約1.5% | 次期戦闘機(GCAP)開発費計上 |
| 2026年度 | 約10兆円 | 約1.7% | 反撃能力整備・弾薬備蓄拡充 |
| 2027年度(目標) | 約11兆円 | 約2.0% | NATO基準達成。防衛費倍増完成 |
2022年から2027年の5年間で予算が約2倍になります。この増額分は主に国内防衛企業への発注として流れます。三菱重工・川崎重工・IHIは長期の受注増が確実視されており、これが株価の上昇ドライバーになっています。
防衛株パフォーマンス比較(2022〜2026年)
防衛費増額が宣言された2022年以降の株価リターンを比較します(目安値・配当含む概算)。
| 銘柄 | 2022年〜2026年4年間リターン | 2026年PER目安 | 配当利回り |
|---|---|---|---|
| 三菱重工(7011) | +約400〜500% | 約25〜30倍 | 約0.8% |
| 川崎重工(7012) | +約300〜400% | 約20〜25倍 | 約1.0% |
| IHI(7013) | +約200〜300% | 約20倍 | 約0.9% |
| Lockheed Martin(LMT) | +約30〜50% | 約18〜20倍 | 約2.8% |
| RTX | +約40〜60% | 約20倍 | 約2.2% |
| ITA ETF | +約40〜60% | — | 約0.5% |
| 日経平均(比較) | +約60〜70% | — | — |
日本の防衛株(特に三菱重工)は日経平均を大幅に上回るリターンを記録。ただしすでに大きく上昇した後であり、PERも割高水準にあります。今から投資する場合は「防衛費拡大の恩恵はまだ続くが、既に織り込み済みの部分も大きい」という認識が必要です。
よくある質問
三菱重工(7011)・川崎重工(7012)・IHI(7013)・三菱電機(6503)・住友重機械工業(6302)が代表的です。日本の防衛費がGDP比2%目標に向けて増加する中、これらの企業の防衛事業部門は受注拡大が期待されています。
ITA(iShares 米国航空宇宙・防衛ETF)とXAR(SPDR 航空宇宙・防衛ETF)が代表的です。どちらもLMT・RTX・NOCなど米国大手防衛企業を分散保有できます。国内証券会社の米国株口座やNISA成長投資枠で購入可能です。
防衛株への投資は倫理観によって判断が分かれます。兵器製造企業への投資を避けるESG投資の考え方がある一方、国家安全保障を支えるインフラとして必要不可欠という見方もあります。投資家自身の価値観で判断してください。なお、一部のETFはESGスクリーニングで防衛株を除外しています。
