株の情報サイトを開くと必ずある「PER 15倍」「PBR 0.8倍」「ROE 12%」という数字。これらが何を意味するかわからなければ、株の良し悪しは判断できない。
この記事ではPER・PBR・ROE・EPSの4つの基本指標を、計算式・目安・実際の使い方まで一気に解説する。読み終わる頃には「この株は割安か?」「企業の稼ぐ力は高いか?」が自分で判断できるようになる。
4つの指標の概要:何を見る指標か
| 指標 | 英語 | 何を測るか | 基本的な見方 |
|---|---|---|---|
| PER | Price Earnings Ratio | 株価 ÷ 利益(割高・割安) | 低いほど割安 |
| PBR | Price Book-value Ratio | 株価 ÷ 純資産(解散価値比較) | 1倍以下は割安候補 |
| ROE | Return on Equity | 純利益 ÷ 自己資本(稼ぐ効率) | 高いほど効率的 |
| EPS | Earnings Per Share | 純利益 ÷ 発行済株数(1株の稼ぎ) | 成長トレンドが重要 |
PER・PBR・ROE・EPSはいずれも「補助ツール」だ。業種・景気サイクル・財務構造によって同じ数値でも意味が変わる。必ず同業他社との相対比較・過去トレンドの確認を組み合わせること。
PER(株価収益率):何年で元が取れるか
「今の株価は1株当たり利益の何倍か」を示す。PER15倍なら、今の利益水準が続けば15年で元が取れる計算。
具体例で理解する
- 株価 1,500円、EPS 100円 → PER = 15倍(1年で100円稼ぎ、15年で1,500円回収)
- 株価 3,000円、EPS 100円 → PER = 30倍(同じ利益で30年かかる → 割高)
- 株価 900円、EPS 100円 → PER = 9倍(9年で回収 → 割安候補)
PERの目安
| PER水準 | 一般的な解釈 | 注意点 |
|---|---|---|
| 〜10倍 | 割安。ただし業績悪化・業種特性の可能性も | なぜ安いかを調べる |
| 10〜15倍 | 日本株の歴史的平均水準。比較的割安 | 成熟業種・安定株に多い |
| 15〜25倍 | 普通〜やや割高。成長期待が含まれている | 成長率と照合 |
| 25〜50倍 | 成長株水準。高い利益成長を市場が期待 | 成長が鈍化すると急落リスク |
| 50倍超 | 高成長期待株(AIテック等)。バリュエーション議論が分かれる | PEGレシオ等と組み合わせ |
| 赤字(N/A) | 赤字企業はPER計算不能 | PSR(売上高倍率)等を代わりに使う |
銀行株は歴史的にPER10倍前後が普通。成長テック株は50倍でも「割安」と言われることがある。「PER15倍以下が割安」という一律ルールは危険。同業他社・業種平均と比べることが必須。
PBR(株価純資産倍率):解散価値との比較
「今の株価は帳簿上の純資産の何倍か」を示す。純資産とは会社を解散した時に理論上株主に返ってくる財産。
PBR1倍の意味
- PBR = 1倍:株価 = 解散価値。割高でも割安でもない水準
- PBR < 1倍:株価が解散価値より低い。理論上「解散した方が株主に得」な状態
- PBR > 1倍:市場が解散価値以上の価値を認めている(ブランド・成長期待・知的財産等)
東証のPBR1倍割れ問題(2023〜)
東証が2023年3月に「PBR1倍割れ企業は改善計画を開示せよ」と要請。これがきっかけで多くの日本株が上昇した。2024年にかけて日経平均が最高値を更新した背景の一つ。
純資産(帳簿価値)は会計上の数字であり、実際の企業価値と乖離することがある。不良債権・減損リスクのある資産が混じっていれば、PBR1倍以下でも安全とは言えない。銀行・不動産・製造業では特に注意。
ROE(自己資本利益率):お金の使い効率
株主から預かったお金(自己資本)をどれだけ効率よく利益に変えたかを示す。ROE10%なら「100万円の元手で10万円稼いだ」ことを意味する。
ROEの目安
| ROE水準 | 一般的な評価 | 補足 |
|---|---|---|
| 5%未満 | 低い。資本を効率よく使えていない | 業種平均と比較が必要 |
| 5〜10% | 普通〜やや低め(日本株平均的水準) | 改善余地あり |
| 10〜20% | 良い。「優良企業」の目安 | 伊藤レポートが目標とした水準 |
| 20%超 | 非常に高い。強いビジネスモデルの証 | キーエンス・信越化学等が該当 |
| 30%超 | 例外的に高い(Apple・Googleレベル) | 負債活用の影響も確認 |
ROEとPBRの関係
ウォーレン・バフェットは「ROEが高い企業は長期的に株主価値を生み出す」と繰り返し述べている。数学的にも、ROEが高いほどPBRが高くなりやすい関係がある:
例:PER20倍、ROE15% → PBR = 3.0倍。ROEが高いほどPBRが高くなる理論的根拠がある。
EPS(1株当たり利益):1株で稼ぐ力
「1株持っていれば何円稼いでいるか」を示す。EPSが成長し続けている企業は、長期的に株価も上昇しやすい傾向がある。
EPSの見方
- EPSの成長率(EPS成長率)が重要。前年比+20%以上の企業は高成長株の候補
- 赤字の場合はEPSがマイナス(PER計算不能)
- 自社株買いでもEPSは上昇する(発行済株数が減るため)。利益自体の成長と区別が必要
PERとEPSの関係
PER = 株価 ÷ EPS なので、EPSが成長し続ければ株価が上がらなくてもPERは下がる(=割安化する)。逆にEPSが横ばいで株価だけ上がるとPERが上昇し割高になる。
配当利回り・配当性向:インカムの指標
「投資額に対してどれだけ配当を受け取れるか」を示す。株価1,000円・年間配当50円なら配当利回り5.0%。高配当株投資やFIRE後の配当生活で重要な指標。
配当性向も一緒に確認する
- 配当性向が30〜50%:健全な還元水準。増配余地がある
- 配当性向が80%以上:業績が悪化したときに減配リスクが高い
- 配当利回りが高くても、配当性向が100%超なら維持困難(タコ足配当の可能性)
PSR(株価売上高倍率):赤字企業の評価
赤字企業や利益がまだ小さいスタートアップ・高成長企業を評価するための指標。PERが計算できない(赤字の)企業の割安・割高判断に使われる。時価総額1兆円・売上高2,000億円ならPSR=5倍。
- SaaS・テック企業では売上成長率と組み合わせて判断する(成長率が高ければPSR高でも許容されやすい)
- PSR1倍未満は割安とされるが、赤字が続く企業は財務体力の確認が必要
- 成熟企業より高成長企業の評価に向いている指標
PEGレシオ:成長を加味した割安判断
PERを成長率で割ることで「成長を加味した割安・割高」を判断する指標。PER30倍・EPS成長率30%ならPEGレシオ=1.0。一般的に1倍以下なら割安、2倍以上は割高とされる。
- PERが高くても成長率が高ければPEGは低くなり、「高PERでも割安」と判断できる
- バリュー投資の父ベンジャミン・グレアムも重視していた指標
- 成長率の予測が難しいため、予想が外れると評価が大きく変わる点に注意
指標計算ツール
4指標の組み合わせ方:実践的な使い方
バリュー投資(割安株探し)の基本スクリーニング
- PER 15倍以下 かつ PBR 1倍以下 → 割安候補の第一スクリーニング
- ROE 8%以上 → 一定の稼ぐ力がある(ただの安値放置株を除外)
- EPS が過去3年増加傾向 → 利益成長が続いている
- 自己資本比率 50%以上 → 財務の安全性確認
成長株投資の確認チェックリスト
- EPS成長率 +20%以上が3年継続 → 真の成長株の条件
- ROE 15%以上かつ上昇トレンド → 成長しながら効率も高まっている
- PEGレシオ(PER ÷ EPS成長率)が1.0以下 → 成長を考慮しても割安
- 売上成長率も利益成長率と連動 → 費用削減だけでなく売上が本当に伸びている
典型的なパターン別・指標の読み方
| パターン | 指標の特徴 | 解釈 |
|---|---|---|
| 高PER・高ROE | PER50倍・ROE30% | 成長株。市場が高成長を織り込んでいる。成長鈍化で急落リスク |
| 低PER・低ROE | PER8倍・ROE3% | 利益は出ているが非効率な企業。ただのバリュートラップ(罠)の可能性も |
| 低PBR・高ROE | PBR0.8倍・ROE15% | 市場の過小評価。バフェット型の好機。東証改革の受益候補 |
| 高PBR・低ROE | PBR3倍・ROE5% | ブランド・稀少性などで株価を支えているが、利益効率が低い |
| EPS連続増加・PER上昇 | EPS+20%・PER20→30倍 | 利益成長をさらに上回る株価上昇。期待が先行しすぎかチェック |
業種別の目安一覧
指標の「適切な水準」は業種によって大きく異なる。同業他社・業種平均と比較することが最も重要だ。
| 業種 | PER目安 | PBR目安 | ROE目安 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| 銀行・金融 | 8〜12倍 | 0.4〜1.0倍 | 5〜10% | 低PBRでも普通。資本規制が厚い |
| 不動産 | 10〜20倍 | 0.8〜2.0倍 | 5〜15% | 資産価値重視。含み益に注目 |
| 製造業(機械・電機) | 12〜25倍 | 1〜3倍 | 8〜20% | 景気敏感。製品競争力が鍵 |
| IT・テック(日本) | 20〜40倍 | 2〜6倍 | 15〜30% | キーエンス・ソフトバンクG等は例外的 |
| IT・テック(米国) | 25〜100倍 | 5〜30倍 | 20〜50% | NVDA・AAPL等は別次元の水準 |
| 通信・インフラ | 10〜18倍 | 1〜2倍 | 8〜15% | 安定収益。高配当が多い |
| 小売・外食 | 15〜30倍 | 1〜4倍 | 10〜25% | 回転率重視。ブランド力が反映 |
| 製薬・バイオ | 20〜50倍 | 2〜8倍 | 10〜25% | パイプライン価値が大きい。PERが高め |
個別株への集中投資はリスクが高く、インデックス投資(オルカン・S&P500)がFIREの基本戦略。ただし、PER・PBR・ROE・EPSを学ぶことで「なぜインデックスが長期で強いのか」や「テーマ株投資のリスク」が深く理解できる。知識は投資判断の質を上げる。
よくある質問
日本株の場合、15倍以下が割安の目安とされることが多いですが、業種によって大きく異なります。成長株(テック・バイオ)では30〜100倍以上でも「成長を織り込んだ適正水準」と判断されることがあります。同業他社との比較が最も実践的です。
PBR(株価純資産倍率)が1倍を下回るということは、株価が解散価値(帳簿上の純資産)より低いことを意味します。東証がPBR1倍割れ企業への改善要求を出したことで2023年以降注目が高まりました。ただし赤字・資産の質の問題・業種特性なども関係するため、単純に「割安」とは言い切れません。
ROE(自己資本利益率)が高いほど、株主から預かったお金を効率よく利益に変えていることを示します。一般的に10%以上が優良とされます。ただしROEは負債を増やすことでも高くなるため、財務レバレッジ(負債比率)も合わせて確認する必要があります。
用途が異なります。EPS(1株当たり利益)は「絶対的な稼ぐ力と成長トレンド」を見るもの。ROE(自己資本利益率)は「資本効率の高さ」を見るもの。バフェット流では両方を重視し、「高ROEを長期維持している企業」を好みます。長期投資ではROEの継続性、トレード目的ではEPS成長率が実践的です。
